グリーンビルディング一問一答(第3回) 2010年1月12日掲載
「環境配慮型建物」の動向を伝える連載の第3回は「グリーンビルディングの先進国」。
建物の環境性能を評価する仕組み発祥の地は、イギリス。
デベロッパーが他社物件との差別化を図ろうとしたことがきっかけだったと言われている。(ケンプラッツ編集部)

建物は元来、立地する場所の気象や自然環境に適合するように建てられていました。
土地固有の材料を用い、最小限の資源で建設して使い続ける工夫を凝らし、意識せずとも環境に配慮した形になっていました。
バナキュラー建築(土地の風土を生かした建築物)が環境にやさしいと言われるゆえんです。
伝統的な建物には、グリーンビルディングの要素が詰まっています。
しかし、このようないわゆる「無意識のグリーンビルディング」は、近代化により、いったん姿を潜めます。
近代化と工業化の負の遺産として環境破壊が意識され始め、意識して「環境」に配慮した建物の設計がなされるようになったのは、
1960〜70年代です。
二度のオイルショックをきっかけに、省エネルギー技術を導入する建物が増えたようです。
その後、グリーンビルディングに関する技術や概念は発展し、当初は省エネに偏っていた建物の環境配慮も、
「資源循環」、「高耐久性」、「快適性」、「健康」、「社会的公平性」など様々な要素を取り入れるようになってきました。
最近では、建物の環境に関するこれら様々な要素を、第三者が客観的・総合的に評価し、格付けし、
認証を与える仕組みが普及しています。
公平な第三者から、グリーンビルディングの太鼓判を押してもらうようなものです。
このような仕組みの第1号は、1990年にイギリスの建築研究財団が開発した環境評価システムBREEAM
(ブリーム:Environmental Assessment Method)です。
BREEAMが開発されたのは、イギリスのデベロッパーが自社物件と他社物件との差別化を図ろうとしたことが
きっかけだったと言われています。
環境への意識の高まりとともに問題視されつつあった、
「環境」という言葉で社会を欺く一種の胡散臭さを払拭する効果なども期待できたでしょう。
実際、英語には「グリーンウォッシュ(greenwash)」という比較的新しい単語があります。
実績はないのに、「環境」という言葉を掲げるだけで環境に良いことをしていると見せかける企業活動などを
揶揄(やゆ)する言葉です。
このように、「自己申告」による環境への取り組みではなく、第三者が建物の環境性能を公平に評価する仕組みが
求められつつあったことも、グリーンビルディング認証の発展に寄与したのでしょう。
イギリスに次いで、アメリカでLEED(リード:Leadership in Energy and Environmental Design)という評価システムが
開発されました。
現在では、日本はもちろん、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど10カ国以上に同様の仕組みがあります。
準備中の国も入れると、50カ国以上にグリーンビルディング認証の仕組みが広がっています。